正楽寺日誌 つれづれなるままに 正楽寺日誌 つれづれなるままに

山の中にいると山が見えない
汚れの中にいると汚れが見えない

 お医者さんの薬だけが薬だと思っていたら

 ちがった

 一日中の天敵がやっと終り

 後の始末をしにきてくれたかわいい看護婦さんが

 「ご苦労さまでした」

 といってくれた

 沈んでいる心に

 灯がともったようにうれしかった

 どんな高価な薬にも優った

 いのち全体を甦らせる薬だと思った

 そう気がついてみたら

 青い空も

 月も

 星も

 花も

 秋風も

 しごとも 

 みんな みんな

 人間のいのちを養う

 仏さまのお恵みの

 薬だったんだなと

 気がつかせてもらった

 山の中にいると山が見えない

 汚れの中にいると汚れが見えない

ページ上部へ